店舗デザインは必要な工程と費用の内訳を知って円滑に進めよう

店舗の印象を決める店舗デザインにはいくつもの工程があり、複数の費用が発生します。何を相談してどのような費用を払うのか、その流れを理解しておくと円滑に進めることが可能です。
店舗デザインは店内の内装や設備の配置など、店舗運営に必要な環境を構築する総合的な作業です。店舗デザインを実際の店舗に反映するためには、設計事務所や施工会社とのやりとりを重ねる必要があり、いくつかの種類の費用を払う必要があります。お金のことであわてないためにはどの段階で何を話し合い、費用をどのタイミングで支払うのかを把握しましょう。

店舗デザインは内装から設備まで含めた概念

店舗デザイン

店舗デザインは店内の雰囲気を作る内装をはじめ、商品を陳列するための什器のデザインや客席で利用される家具のレイアウトに加え、厨房やバックヤードの確保など店舗の設計全体を構築する作業といえます。
デザインというと内装をどうするのかといった部分に注目しがちですし、店舗の内装は顧客の印象に残る要素でもありますが、運営していくためにはいかに商品を陳列するのか、あるいはいかに快適な空間を顧客に提供するのかという点も店舗デザインには必要です。そのために店舗デザインでは店舗に設置する什器が店内面積に対して適正であるか、その配置方法が導線を妨げないかについても検討が行われます。
さらに、店内で調理を行う飲食店ではその厨房のレイアウトも大切で、ピークタイムの慌ただしい状態でも提供から片付けまでのプロセスが安全かつ効率的に完結することも欠かせない要素ですし、スムーズな提供は顧客満足度につながり、安全な導線の確保は働く人の快適さの確保になります。
店舗デザインではこうした要素を加味しながら施工主のイメージに一番近い形で魅力的な店舗を設計し、実際の工事に使用する設計図としてまとめる作業を行います。そしてその設計図に基づいた工事が行われるので、設計図を作成するまでのプロセスは非常に重要といえますが、店舗デザインはそれだけで完結するものではありません。実際に工事が行われ、店舗が完成して初めて完結するといえるものなので、竣工まで常に計画を確認して状況を把握することが求められます。

設計事務所の選び方と作業の流れ

店舗デザイン

店舗デザインで最初に行うのは設計事務所で行う設計図の作成で、これが全ての基本となる作業です。設計事務所を選定する際には、その事務所が店舗デザインを専門としているか、あるいは総合的なデザインの中で店舗デザインの実績があるかについて確かめます。
店舗デザインをする場合、厨房設備や什器デザインなど一般住宅には無い設備の設計が必要になるため、店舗特有のデザインを熟知している設計士やデザイナーに相談するのが最善です。
それに加えて、その事務所が手掛けてきたデザインの雰囲気が施工主の考えている完成イメージにどれほど近いかも重視すべきポイントで、例えば木目調の内装を中心に店舗デザインを検討しているのであれば、天然素材を生かしたデザインを手掛けている事務所に依頼するのが良いですし、モダンなタイル張りや打ちっぱなしの雰囲気が理想であるなら、そうしたデザインを売りにしている事務所に相談しましょう。
依頼する設計事務所が決まったら、店舗デザインに掛けられる予算と、工事を行う物件が設備の無いスケルトンなのか設備が残された居抜きなのかといった情報を伝え、写真などを参考に大まかな店舗デザインのイメージを提示します。こうした情報からスケッチの作成ができたら、内装に使う素材や設置する設備に関する費用について相談をすすめます。特に内装は素材を変更するだけで費用が上下するので、可能なら設備工事費と内装費の予算額を分けて、それぞれに一番近い形での工事を決定するのがおすすめです。

支払う費用の種類と支払いのタイミングについて

店舗デザイン

店舗デザインで支払いが必要になるのは設計事務所と施工会社の2社が基本で、それぞれに支払う内訳があります。まず設計事務所への支払いは店舗デザインそのものに対する『デザイン料』と、着工後に店舗が設計通りの工事で施工されているのかを設計事務所が確認する際の費用である『設計監理費』の2種類です。
デザイン料の相場は『面積当たりの単価』と『工事費用全体の10%』という2通りの計算方法が主流で、面積当たりの単価で計算する場合、基準以下の面積は一律料金になっていることもあるのでその確認が必要です。工事費用から計算する場合はデザインが完成するまで確定しないので、あらかじめ料金を決める場合は大まかなデザインが決まった段階で予算から先に計算してもらうとよいでしょう。
また、設計監理費も同様に面積当たりの単価で計算する場合と、工事費用全体の10%から20%で計算する場合があるので、デザイン料の確認時に合わせて確認します。これらの支払いは『設計図の完成時』に半額を支払い、残りは店舗の引き渡し時に支払います。実際に店舗を施工する施工会社への支払いはその工事に伴う費用なので、工事内容と工事期間によって変動します。
大まかに分けると内装や什器あるいは看板にかかる『造作工事費』と、厨房や空調などの『設備工事費』に割れており、設備が残されたままの居抜き物件は設備工事費が低い傾向です。支払いは『着工時』に半額を支払い、残りは店舗の引き渡し時に支払うことになります。

店舗デザインの費用とスケジュールには余裕が必要

店舗デザイン

店舗デザインは設計段階で問題がない場合も実際に工事を始めると予期せぬ問題や追加工事が発生することが少なくないので、完全に予算や予定通りに作業が進まないものと考えることが必要です。そのため、開業までの期間が短い場合はデザインに掛ける時間や見積もりの比較が不十分となり、準備不足のまま開業を迎えてしまう可能性もあります。
一般的に飲食店を開業する場合は1年前から準備が必要と考えられており、居抜き店舗での開業でも3カ月以上は余裕を持って進めるのが良いと考えられます。そのため、店舗予定地の賃貸契約を締結したらすぐさま店舗デザインの作成を進めなければ資金にロスが生じるので、内装などの店舗イメージは物件探しの段階から持っておくことが大切です。
また、工事費を設計図完成時点の予算ちょうどで計算してしまうと、工事してみなければわからなかった問題が発見された時や、急激な世界情勢の変化や為替相場の変動などで資材費用が高騰してしまった場合に追加費用の準備に苦労する可能性が高いです。開業資金を融資によって調達している場合は追加融資の問題にも直面するので、店舗デザインの中に追加工事が発生しやすい設備や装飾が無いかを施工会社に確認し、若干の余裕をもって資金を準備するのがよいでしょう。
また、スケルトンよりも設備工事費が抑えられる居抜き物件の場合も予期せぬ設備工事やクリーニング費用が発生する可能性があるので、事前に物件状態を施工会社の方に確認してもらうと安心です。

快適な店舗を構築するための店舗デザインには、厨房や什器の配置といった店舗特有の設計が求められるため、専門性や実績のある設計事務所に相談することが必要です。予算と施工主のイメージから大まかなデザインが決まったら予算に合わせた素材選択を行い、デザイン料や設計監理費の半額を支払います。施工費用は着工時に工事費用の半額を前払いし、引き渡し時に設計事務所と施工会社に残りの代金を支払います。工事には追加費用が出ることも多いので、資金は余裕をもって準備しましょう。